成果主義に疲れた営業マンへ──『ザ・エージェント』が教えてくれる“誠実に働く勇気”
「くたばっちまえ！」という一言が、胸に突き刺さった
作品の冒頭、ジェリー（トム・クルーズ）は試合中に怪我をした、
あるクライアント（スポーツ選手）の見舞いに病院を訪れます。
その帰り際、スポーツ選手の子どもから浴びせられるひと言…..
「くたばっちまえ！」
この瞬間、私は思わず息を呑みました。
過去に営業職も経験していた自分。
同じ営業職のヒロトであれば、ここはすごく響いたはずです。
「……あの子の言葉、他人事じゃなかったですね。
いつも数字に追われて働いてると、
気づかないうちに“誰かの大事なもの”を傷つけてしまってるのかもしれない。
売上のため、契約のため──
そう自分に言い聞かせて働いてきたけど、
本当はずっと…どこかで違和感を抱えていました。
『俺は、本当に正しい仕事をしてるのか？』
ジェリーの表情を見た瞬間、
それが自分にも返ってきた気がしたんです。」
営業職として働いていると、
数字にばかり追われ、相手の人生まで想像する余裕なんてなくなることがあります。
でもジェリーは、この子どもから浴びせられた言葉で自分が"一つの家族の幸せ"を壊してしまっているのかもしれない、という自己嫌悪に。
「金儲けのために、人の人生を踏みにじっていいのか？」
その問いは、
“成果至上主義”の会社で消耗してきたヒロト自身の心にも深く刺さるものでした。
利益と誠実の間で揺れる心
ジェリーは考えさせられます。
「この世界には、“売って勝負”という価値観しかないのか？」
「信頼や誠実さは、もう古いのか？」
会社の利益のために働くほど、
人としての正しさを失っていく感覚。
ヒロトも同じです。
・ノルマ
・売上
・取引先のご機嫌取り
・上司の要求
そんなものばかりで、
「何のために働いているんだろう」と思う瞬間は何度もありました。
ジェリーの違和感は、ヒロトがずっと胸に抱えてきた“社会へのモヤモヤ”そのものだったのです。
クビ宣告は突然に。。
理想を語った結果、ジェリーは会社からクビを言い渡されます。
「よくある話」と笑う人もいるかもしれません。
でもヒロトは笑えませんでした。
会社のために頑張ってきたのに、、、気づけば誰も味方をしてくれない。
実績もさることながら、空気を読んで動く人間だけが評価されていく。。
ヒロトが同じ状況に直面しているわけではありませんが、
ジェリーの
「絶対に見返してやる！」
という感情は、同じ営業マンとして、共感を覚えるものであるはずです。
「誠実に仕事をしたい」だけなのに、なぜ報われないのか
ジェリーが新たに掲げる価値観は、決して難しいことではありません。
・取引相手を大切にする
・お金よりも信頼を重視する
・人として筋の通った働き方をしたい
ただそれだけです。
でも会社は違います。
「この世界は“契約して勝負”。理想や誠実さなんて必要ない。」
ヒロトも同じ壁に何度もぶつかってきました。
営業という仕事は「数字」で判断されがち。
どれだけ誠実に向き合っても、結果が伴わなければ“無価値”とされてしまいます。
ジェリーの葛藤は、
**働く大人が誰もが一度は感じる“理想と現実のねじれ”**の象徴なのかもしれません。
一度失ったとしても、そこから始まる人生もある
クビになり、仲間に裏切られ、
たった一人のクライアントと一人の女性しか残らなかったジェリー。
でも、そこから生まれた“小さなチーム”は、大きな会社よりもはるかに温かかったのです。
ヒロトは、この部分に強く救われます。
世間に評価されなくても、
多くの人に必要とされなくても、
“たった一人”の信頼があれば前に進める。。
ジェリーの再出発は、ヒロトにとって
「一度失っても、人生はそこで終わらない」
という強いメッセージに聞こえたのです。
ヒロトが『ザ・エージェント』から受け取ったもの
映画を観終えたヒロトの心に残ったのは、派手な逆転劇でも成功物語でもありません。
むしろ──
・誠実さは捨てなくていい
・自分の価値観を大事にしていい
・人を大切にする働き方は必ず報われる
・大きな組織でなくても“自分のチーム”を作れる
という、静かな勇気でした。
ジェリーの物語は、
ヒロトのように“キャリアと自分らしさの間で揺れる30代の男性”にとって、胸に残る映画作品です。
静かに背中を押されるような映画は、時に人生の方向をそっと変えてくれます。
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